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Cross-border Inspiration
心の琴線を奏でる何かが与えてくれる、信じてみたい気持ちを。超越国境的感動。

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■ 摩天楼の涙
2007年02月28日 (水) 編集 |
香港、中環からほどなく離れた丘で。


会合を終え、宿泊ホテルの部屋に駆け込む。

22時40分を指した枕元のワールドクロックを凝視すると、
まるで眠りから覚めて動物の直感を取り戻した猫のように、
脳幹のスイッチが切り替わった。

バスローブを羽織り、
使い古したナイキの水陸両用スパッツを携えて、
エレベータで8階に向かう。


あと15分でクローズする小さな泉。

みなもからはほんのり暖が摂られた水温の湯気があり、
体温よりも低いが冷酷には感じないほどの水中にそっと頭を埋める。

3メートルの深さには都会の旋律が転がっている。
猥雑な夜想会とは違った種類の静寂なジャズが水中のスピーカーから聞こえてくる。

僅か15メートルほどの幅の泉をがむしゃらに潜り尽くした後、
全身を脱力させる。


あと5分でクローズするこの泉。

浮力に任せ瞳の焦点は天に委ねる。

左の眼球はやや欠けた白熱の月に魅せられる。
左の摩天楼はときにそれを咀嚼し、ときにそれを反芻し、空間を掻き混ぜる。

右の眼球は遥か遠くの砂時計を捕らえ、銀河時間を計りだす。
右の摩天楼はときにそれを隠匿し、ときにそれを提示し、時間を掻き混ぜる。

自己がまるで闇夜に溶解したような、
光がなければ忘れ去られてしまうような、
忘れ去られてもよいような心が浮かんでいる。


空路で香港に就くときほど、
人間の創造建造物に息巻く瞬間は無い。
その理由は聳え立つ摩天楼、
凝縮された人間の情感と物質の無機質の対比に痛く心が打たれるからである。

天から見た地の世界も、
聳え立つ塊を底辺から見上げることで気が付くことがある。
天は地があるから天であると、
壮大なのか矮小なのか分類できない想念が込み上げてくる。

まるで無機物が生み出した有機物のような、
摩天楼の谷間にある水溜り。

ほんの少し匂う塩素消毒は、
怒っても悲しんでも毒を滅する涙に似ている。


貴方は何度もがいても、
必ずまた起き上がる。


亜熱帯でも真冬の風は凍えるようで、
バスローブを羽織って、
タイムオーバー後の遅延を守衛さんに謝りながら、
プールを後にした。


またここに戻ってきた、
新しいようで古い始まり。

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# | 2007/02/28 00:08 | 中国 | Comment (6) Trackback (0) |
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